公益財団法人 衣笠繊維研究所
公益財団法人 衣笠繊維研究所とは、
繊維学とその基礎学問領域の成果を研究報告書、書籍発刊、講演会など
の啓蒙活動によって広めるとともに、当財団が維持管理する国登録有形
文化財「衣笠会館」の一般公開事業を行う。
衣笠会館の歴史的位置づけについて
明治38年(1905)建築 国登録有形文化財
木・れんが造かわらぶき2階建
(平成17年 第26-0199号 文化庁)
所在地 京都市北区北野下白梅町29番地
衣笠会館は、平成24年4月1日、京都府知事より認定された公益財団法人 衣笠繊維研究所(旧財団法人 衣笠会 昭和25年設立)の
活動拠点として利用していますが、もとは、明治時代、京都の基幹産業を担った機業家・藤村岩次郎氏が明治38年に普請した屋敷
3,500坪の建物の自宅洋館部分に当たります。
藤村氏は、明治28年に「五二会京都錦ネル」(綿ネル株式会社 → 日本製布株式会社に変遷)の創業者の一人で、京都綿ネルは市内
四か所に大工場を稼働し、斯界最大手の会社となりました。
綿ネル機業の興隆を背景に、藤村氏は北野白梅町の広大な一角を占めていた因幡池田屋敷跡地に豪壮な屋敷を構え、明治44年頃、寒村であった衣笠村に
衣笠園という住宅地も開発した実業家でもありました。繊維業界の命運、次代の変化の中で、藤村氏の屋敷は、和館も庭園も姿を消し、かつてのメイン
ストリ−トであった一条通に面する洋館と玄関前の庭園一部を残すのみとなりました。
衣笠会館は、明治後期の接客スぺ−スとしての洋館の中で、構造の煉瓦をそのまま外観としている住宅建築としては希少です。百年以上たっても狂いの
ない堅牢さや旧尼崎紡績本社屋との様式的共通性とを考え合わせると、設計者は同社の煉瓦工場群と同一であると考えられます。
内部は、簡潔ながら各部屋ごとに意匠の異なる暖炉を据えた洋室と伝統的意匠の和室が設けられ、西陣の機業家が集まったであろう往時を彷彿とさせる
時代の証人といえる名建築です。
現在、会館を一般公開するとともに公益財団法人 衣笠繊維研究所が所有しています。